日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

COVID-19に伴う摂食嚥下障害―様々な病態に注意して多職種で対応する(2021/10)

COVID-19感染症は長期にわたり、様々な年代に拡がってきました。神経症状および摂食嚥下障害に関しても多数の報告がみられています。神経筋症状の合併率は36.4-88.0%と報告されており、神経系では脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)、髄膜脳炎・脳症・脳炎・運動異常症・免疫介在性ニューロパチー・重症筋無力症・筋障害・COVID19治療薬に伴う症状など様々な病態が報告されています(図1)。神経障害をきたす病態機序としては中枢神経系や筋へのウイルスの直接感染、血管内皮への感染、血液脳関門の破綻、血栓形成、間接的な神経障害などが考えられています(図2)。
例としてはCOVID-19による血栓形成に伴い、脳梗塞や脳出血を合併して嚥下障害を合併することがあります。また、ウイルスが中枢神経系に感染して髄膜脳炎・脳症・脳神経炎を起こして嚥下障害を生じることもあります。脳の損傷部位や脳神経、筋肉など障害を受けた部位によりそれぞれ嚥下動態が異なるため、病態を把握して対応する必要があります。食形態や姿勢、訓練方法など疾患によって異なるからです。
一方、COVID-19の急性呼吸不全により嚥下障害をきたすこともあります(2021年3月のコラム参照)。ICUで人工呼吸器管理をした患者では嚥下障害を高率に合併するため、評価をする必要があり、特に声帯麻痺や不顕性誤嚥に注意します。
また、後遺症として意欲低下、うつ、嗅覚障害、味覚障害なども問題となります。食欲低下により栄養不良になると、さらに嚥下機能は低下します。嗅覚障害・味覚障害がある場合には食事の形態や味にも配慮が必要です。COVID19に対抗するために栄養管理もWHOから推奨されています。きめ細かい栄養管理が必要です。
COVID-19に関する摂食嚥下障害は本学会のコラムでも何度か取り上げられています。また、日本嚥下医学会から診療ガイドラインも提唱されています。COVID19に伴う摂食嚥下障害では嚥下障害の病態が多岐に及ぶため、様々な角度から多職種で関わる必要があります。感染予防を行いながらの対応は大変ですが、患者さんを支える取り組みが引き続き必要とされると考えます。

図1 COVID19の神経筋合併症
図2 神経筋合併症の病態機序

下畑先生の許可をいただき転載

参考文献
1,下畑 享良. COVID–19 と神経変性疾患診療. 神経治療 38:20–23,2021
2,下畑 享良. 新型コロナウイルス感染症と神経筋合併症. J-IDEO Vol.5 No.1, 10-19, 2021
3,Romero–Sánchez CM, et al : Neurologic manifestations in hospitalized patients with COVID–19 : The ALBACOVID registry. Neurology, June 01, 2020.
4,日本嚥下医学会 新型コロナウイルス感染症流行期における嚥下障害診療指針 2020年4月14日 https://www.ssdj.jp/uploads/ck/admin/files/topics/202004/006_kikan.pdf
5,Yurika kimura, et al; Society of swallowing and dysphagia of japan: Position statement on dysphagia management during the COVID-19 outbreak. Auris Nasus Larynx. 2020 Oct; 47(5): 715-726.

コラム10月号(図表)巨島先生

諏訪赤十字病院 リハビリテーション科

巨島 文子