難病の悩み相談(2019/04)
2015年1月に施行された難病法29条では、難病相談・支援センターのことを「難病患者さんの相談や支援、関係機関の方々の相談・支援,地域交流活動の促進などを行う拠点施設」として位置づけられている。鹿児島県では県の直営で2011年10月にハートピア内に開所され、私は所長(非常勤)として難病相談などの業務にあたっている。
難病相談ではさまざまな悩みを聴くことが多い。悩みはそれぞれで多岐にわたっており解決の糸口は見つけにくく、ただ聴いてあげるだけのこともある。
50代後半の男性、公的な役所に勤務されており、もうしばらくすると定年を迎える。2年ほど前からいびきをかくようになり、体の動きも悪くなってきた。MRIなどの画像の状況も加味して多系統萎縮症の診断になった。
主治医の先生からは気管切開を勧められている。自覚症状としては軽度の嚥下障害があるが、特に息苦しさも感じないので気管切開する時期を少し延ばして定年後に延期できないだろうかという相談である。
この日の二人目の相談は中学3年生の息子を持つ母親からである。小さいころは特に運動機能に問題はなかったが、中学に通うようになってから走り方などが遅くなり、ベッカー型筋ジストロフィーと診断された。ネットで調べて母子ともども落ち込んでいたが、今は平静に受け止められるようになっている。高校進学と就労に関して何かアドバイスがあればお願いしたいというものである。
二つの相談を簡単にまとめると、安全を優先させるべきか、一方ではQOLを取るべきかということになる。
私は基本的な姿勢としては、さまざまな情報を提供して、最終的に決めるのは患者さん本人であると考えている。いずれにせよ正解はない。
公益社団法人鹿児島共済会南風病院
福永秀敏