誤嚥に伴う呼吸器感染は多系統萎縮症のCPAPの継続を困難にする(2014/09)
多系統萎縮症(MSA)の睡眠呼吸障害に対する治療として,持続的陽圧換気療法(CPAP)が行われます.CPAPは短期的には睡眠呼吸障害を改善しますが,どのぐらいの期間,CPAPを継続できるのか,また中止の場合,その原因は何であるのかは不明です.今回,私どもはこれらの問題に関して検討しましたので,ご紹介させてください.
対象は,Gilman分類のprobable MSAと診断された症例のうち,CPAPを導入した症例としました.NPPVの継続期間,中止の原因,CPAP中止後の対応について後方視的に調査しました.
結果ですが,対象は29名で,内訳は観察期間中の継続中止が19名(66%),死亡が5名,CPAP継続中が4名,追跡不能が1名でした.NPPVの継続期間の中央値は,13ケ月(1~53ケ月)と1年程度でした.13ヶ月未満しか継続できなかった群と,13ヶ月以上継続できた群を比較し,継続期間に影響を及ぼす要因を検討したところ,唯一,floppy epiglottis(喉頭蓋の可動性の亢進による上気道狭窄)の頻度が,継続期間が短い群において有意に高い結果になりました(64% vs 15%; p=0.015).
また,CPAP継続中止の原因で一番頻度が高かったのは,誤嚥等に伴う呼吸器感染(9名)で,次いで呼吸不全(4名),CPAPマスクの不快感(3名),CPAPによる窒息感の出現(2名),頻尿(1名)でした.本研究は,以下の点を明らかにしました.
1)CPAPは1年程度しか継続できず,その原因は誤嚥に伴う呼吸器感染が最も多く,嚥下障害はCPAP継続の可否に影響を及ぼすこと.
2)疾患に伴う呼吸不全,治療の途中から出現する窒息感,頻尿などもCPAP中止の原因になること.
3)floppy epiglottisを認める症例は,CPAPの長期継続が困難である可能性があること.
1)に関しては,CPAPを長期継続するためには,嚥下障害対策が重要であることを示唆しています.
Shimohata T et al. Discontinuation of continuous positive airway pressuretreatment in multiple system atrophy. Sleep Med. 2014 on line
新潟大学脳研究所神経内科
下畑 享良