日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

脳卒中後の肺炎予防(2009/04)

 臨床的に脳卒中後の嚥下性肺炎の予防効果が言われている薬剤に塩酸アマンタジン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE-I)、抗血小板剤のシロスタゾールがあります。特にシロスタゾールでは、Yamayaらが脳梗塞を既往に持つ297例をシロスタゾール100mg投与群(152例)と非投与群(145例)に分け3年間前向きコホート研究を行い、シロスタゾール投与群が脳梗塞再発および肺炎発症を共に50%に抑制したと発表しています。
 しかしシロスタゾールによる脳梗塞患者における肺炎予防の機序の詳細は解明されていません。
 このたびN.Zhangらは慢性脳低灌流ラットを使用し、簡易嚥下誘発試験による嚥下機能の低下と中脳黒質と線条体におけるCREBのリン酸化、TH合成、ドーパミン産生、さらにサブスタンスP産生が低下することを示し、さらにシロスタゾール投与によってそれらが抑制されることを明らかにしました。(Neuroscience 158(2009)665-672)
人でも現在慢性期脳梗塞患者様に対してのシロスタゾールの嚥下機能改善作用についての多施設共同研究の準備が進行中です。成果が待ち遠しい限りです。。

 

鳥取医療センター 神経内科

金藤大三