脂質に注意(2011/02)
適切な栄養補給は身体の構成成分を正常に維持し,その機能を正常に発現するための基本です.脂質投与量(kcal/日)は総エネルギー(Total energyexpenditure:TEE)の20-30%が必要ですが,高齢者では利用低下があり過剰投与に注意が必要です.経腸栄養が困難な場合には熱量補給としても重要ですが,いくつかの注意する点があります.
静脈栄養では,静注用脂肪製剤としてイントラリピッド,イントラリポスなどがあります.10%脂肪製剤には0.1 g/mlの脂肪が含まれており,約1 kcal/mlに調節されています。脂肪乳剤には至適投与速度があり,0.10~0.15g/kg/時以下です.体重50kgでは10%イントラリポス250mlを3時間以上かける必要があります.
脂質投与を目的として用いない薬剤で,過量投与に注意する必要があるのは鎮静薬として用いられるプロポフォールです.神経疾患では脳炎やけいれんで比較的長期間用いることがあります.デュプリバンは水に溶けにくいプロポフォールを1%脂肪性剤で乳化させており,約1.1 kcal/mlです。10ml/hrで鎮静している場合は,11 kcal/hrの脂質投与で約264 kcal/日の脂質投与になります。過量投与は,脂肪滴をマクロファージが貪食することにより,肺での炎症を促進させるとする可能性も示唆されています。高用量プロポフォールの長期投与時に代謝性アシドーシス,脂質異常症, 多臓器不全が進行し, 徐脈性不整脈, 心停止に至るpropofolinfusion syndrome (PRIS)にも注意が必要です.
岡崎 薫: “プロポフォール製剤の進化と臨床的な課題”. 日臨麻会誌 Vol. 28: 301-309, (2008)
京都第一赤十字病院 巨島文子