美味しい嚥下調整食を目指してー京都での取り組み (2015/08)
嚥下調整食は摂食嚥下訓練には欠かせないものであるが、見た目や味には制限があり、継続して食べることが困難となる患者が多い。京滋摂食・嚥下を考える会(以下、当会)では、日本料理アカデミーや京都府生菓子協同組合など(以下,専門家)と協力して、嚥下調整食をより美味しく作成し、新たな食文化として構築するために活動している。
専門家と管理栄養士・調理師・医師・言語聴覚士等の多職種が参加して勉強会を行って知識の共有を図り,作成技術,味,形状などの検討を行ってきた。各施設で実際に提供されている嚥下調整食と専門家が試作した嚥下調整食を持ち寄り、意見交換を重ねて改善を図った。専門家からは調理のデモストレーションや調理実習会を通じて調理技術を学んでいる。
病院食としては高価であるため普段の提供は困難であるが,「ハレの日」に美味しい嚥下調整食を味わうことができる。そこで,京料理や和菓子の嚥下調整食を提供するイベントを敬老の日や節分などに京都府内の施設で開催した(図1,2)。和菓子では物性測定を施行して嚥下の病態に応じた食品提供を目指しており,今後は商品化も視野に入れている。和食・和菓子
この活動では多施設・多職種の参加により地域連携を深めることにもつながっている。また,メディアにも取り上げられ、摂食嚥下障害と嚥下調整食について一般市民が関心をもつ契機となっている。食の力・食支援の重要性が実感される。
他にも介護食器を漆や陶器などの和食器で作成し,食べやすく,食の楽しみを味わうことができるよう取り組み始めている。今後も地域で嚥下障害患者を支える取り組みを続けていきたいと考えている。
京都第一赤十字病院 巨島文子