筋ジストロフィーの摂食嚥下障害について(2024/10)
筋ジストロフィーの中で最も頻度が高いデュシェンヌ型筋ジストロフィーは,ジストロフィン遺伝子の変異により発症する筋疾患です。歩き始めは周りの子どもと同じ時期になりますが,膝に手をつかないと立ち上がれないガワーズ徴候があり,3歳からは周りの子どもより運動機能の発達が緩やかであることに気づかれます。進行性の筋力低下を主症状とする疾患で,小学生頃には車いすを使用するようになり,徐々に心機能の低下,呼吸機能の低下が出現し,活動が制限されます。
近年の論文では,自閉スペクトラム症の有病率が3~19%,注意欠如多動症の合併率が11.7~32%との報告1)がみられます。
筋ジストロフィーの摂食嚥下障害では,運動機能障害として筋力低下に伴う口唇閉鎖不全,舌運動障害,咀嚼運動障害があります。また,咽頭筋力低下による食べ物の送り込みの障害,食道括約筋の機能低下することによる食べ物の食道での詰まり,上肢筋力低下による自食困難,姿勢保持困難,呼吸不全に伴う嚥下困難などがみられます。それに加えて自閉スペクトラム症,注意欠如多動症に伴なう嚥下機能障害も合併する可能性が考えられます2)(図1)。
文献2から興味ある知見を抜粋させていただきました。ご参考にして下さい。
1) Hendriksen,J.G.,Vles,J.S.,“Neuropsychiatric Disorders in
Males with Duchenne Muscular Dystrophy:Frequency Rate of Attention-deficit Hyperactivity Disorder(ADHD),Autism Spectram Disorder,and Obsessive-compulsive Disorder”, J Child Neurol 23(5),pp477-481,2008.
2) 中村由紀子,稲田穣編著「発達障害や身体障害のある子どもへの摂食嚥下サポート」Chapter3発達障害のある子ども②筋ジストロフィー 中央法規出版,2024年,p58.
出典:一般社団法人日本小児神経学会HP「小児神経Q&A Q94」
https://www.Childneuro.jp/modules/general/index.php?content_id=122 (閲覧2024.4.27) 文献2) より引用
図1 発達障害にはどのような疾患が含まれますか?
国立病院機構千葉東病院 歯科
大塚 義顕