神経筋疾患患者さんの咀嚼、嚥下機能と献立の選択(2014/08)
~指標となる「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」のご紹介~
できるだけ安定した経口摂取で栄養摂取を進めたい、可能な限り好みに合わせて献立を選びたい、という気持ちは介護者、専門職の誰もが願うところでありましょう。また、家庭介護でも施設、病院でのケアの実際でも、「食事」に関することだけがケアの対象ではなのは当然で、調理、摂食介助を含め、それにかけることができる時間も制約があるのが現実です。
神経筋疾患患者さんの咀嚼・嚥下に関する機能に合わせた食形態の選択は、進行する症状に合わせることが大切なのは当然ですが、食のQOLや食事の準備の省力化も大切なポイントです。
そこで今月は、食形態の選択や調理の工夫、咀嚼能力の見極めの指標とすることができる「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」をご紹介しましょう。
「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」は、食事の分類ととろみの分類を示したもので、本邦において、これまで統一された嚥下調整食の段階および名称がなく、各病院や施設間を患者さんが移る際に不利益を来していたことを改善しようという目的で考案されたものです。咀嚼、食塊形成の機能を「必要な咀嚼能力」として段階を示し、また各段階の食物の形態や特色を具体的に示しているので、現在の機能から適応する形態を選定すること、症状が進んだ次の段階で選択するとよい食物の特色も知ることができます。
具体的には、段階をコード0から4の5段階に設定し、コード0~1ではゼリーととろみに分けて再分類がなされています。次の段階のコード2はスプーンですくって食べることが可能なものの中で、ピューレ、ペースト、ミキサー食などでべたつかずまとまりやすいもの、および不均質なものを含むものというように細かい2段階を設定しています。次のコード3は、舌と口蓋間の押しつぶし能力以上の咀嚼能力で食べられるもので、形はあるが押しつぶしが容易で食塊形成や移送が容易、咽頭でばらけず嚥下しやすいように配慮されたもの(離水に配慮した粥など)、コード4は上下の歯槽堤間の押しつぶし能力以上の咀嚼能力に適応するもので、硬さ、ばらけやすさ、粘りつきやすさなどのないもの(軟飯、全粥など)と、具体的に示されています。
これらの内容は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会のホームページで是非ご確認ください。
http://www.jsdr.or.jp/doc/doc_manual1.html
分類図と形態の説明、目的・特色、主食の例、必要な咀嚼能力等を示した早見表、およびそれらの解説文が詳細に示されています。
埼玉県総合リハビリテーションセンター 言語聴覚科
清水充子