日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

温かい心と科学の成果を患者に伝えよう(2009/06)

医療機関に長年勤め、また管理する立場にある者として、常々無駄をなくそう、なくしたいと考えてきた。人口増加に伴う需給バランスの崩れ、地球環境変化や災害による生産量減少などの理由で食糧不足が予想される中、至る所で残食が眼に留まる。
 提供される食事は、患者が食べて、消化して、そしてエネルギー源や蛋白合成に利用されてこそ栄養学的意義を有する。これまで多くの栄養士は、嚥下機能状態に応じた調理法、食欲をそそる外観、栄養素配分などに工夫を重ねてきたが、まだ何かが足りない印象をもつ。患者と献立を作成し食後感想を次の献立に反映させ、また作る側の心の温かさを患者に伝えるなど、残食を減らす努力をするべきであろう。私が主任研究者を務める筋ジス研究班は、昨年度から必要栄養量設定に資するべく二重標識水を用いてエネルギー消費量の測定を開始した。
 温かい心と科学的成果を患者・家族、一般人に提示しながら栄養の重要性と完食の大切さをアピールする活動を展開していきたい。

 

独立行政法人国立病院機構刀根山病院

神野 進