日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

東日本大震災レポート(1) 炊き出しごはんについて

 3月11日、私は職場である大学の窓のない部屋で会議をしている時に大きな揺れを感じました。しかし、揺れは長かったものの落下物もなく、電気が消えることもなかったためにそのまま会議を続けていましたが、その日の朝成田からカナダの学会に飛ぶはずだった友人が、地震のために空港が閉鎖になったと3時前に電話をしてきました。同じ会議に出ていた方が、携帯電話でテレビを見て初めてリアルタイムの映像を見ることになりました。その時に思ったことは、きっと阪神淡路大震災の時も他の地域ではこんな感じだったんだろうなと言うことでした。そして、何が出来るか考える前に私が所属しているAMDA(TheAssociation of Medical Doctors of Asia)本部にER登録をし、私の支援活動が始まりました。仕事の関係ですぐに出ることは出来ませんでしたが、上長の許可を取り17日~23日の一週間、主に釜石市と大槌町で活動することが出来ました。

 

 4つの避難所と巡回診療などを行いました。派遣されてすぐ気づいたことは、外科外傷の患者がほとんどいらっしゃらないことです。一週間経っていたからかとも思ったのですが、そうではないようで、どの避難所も高齢者が多く、慢性疾患の方がほとんどでした。

 

 土地柄か我慢強い方が多く、下痢と嘔吐の70歳代の女性が、だんだん顔色が悪くなるので気になって時間を取って話を聞くと、食事が摂れてないようなのです。避難所は中学校で、炊き出し用の大きな釜が無く、自衛隊の配給のご飯をいただいていたのですが、どうしても炊きたてではないために硬くなってしまっており食べることが出来なかったようです。しかし、自分だけわがままを言うことがはばかられて、ずっと我慢されていたのです。慌てて携行していたおかゆのパックを何とか温めて召し上がっていただきました。

 

 災害時はどうしても多くの人を助けることを考えてしまいますが、一人一人の状態は違い、またアレルギーのある方などもいらっしゃるはずです。色々なことに備える時に、出来るか出来ないかではなく、そういった方々もいらっしゃると認識すると言うことはとても大切なのではないかと思います。

 

※ この原稿は、今すぐおかゆを送ろうという趣旨ではありません。各被災地や避難所の状況は日に日に変わりますので送り先のニーズと現地で何が出来るか(電気・ガス・水があるのか等)をご確認ください。

 

兵庫医療大学 薬学部 桂木聡子