東日本大震災レポート(5) 自治医大東北支援プロジェクトに参加して
私は,自治医大東北支援プロジェクトの第4陣として,4月7日~16日に,宮城県登米(とめ)市米谷(まいや)病院と南三陸町の最大の避難所であるベイサイドアリーナに配属されました.
米谷病院での診療内容は元々の慢性疾患のコントロールや内服の継続がほとんどでしたが,ワーファリン内服中で,INRが異常高値を示した患者さんが多くみられました.生野菜や果物が入手しにくく,ビタミン不足が危惧されました.他にも食事療法や適度な運動ができる環境ではなく,脂質異常症や糖尿病も増悪傾向にあり,血圧はほとんどの方が測定できないと言われていました.
ベイサイドアリーナでは,直接診療には関わらずに,医療統括本部の手伝いをしました.震災から1箇月近くが経過していましたが,電気が開通したのは一部地域を除いて4月15日で,水道はまだ復旧の目処がたっていませんでした(おそらく現在でも水道は復旧していないと思います).私自身も嚥下障害の方々が気になり,少しリサーチできたらという思いはあったのですが,実際にはまったく情報収集できませんでした.東北大の先生が,栄養状態の把握のために,各避難所で協力が得られる方に24時間の蓄尿を数日お願いしたいと本部に問い合わせをされているのを聞きましたが,具体的にこの企画が始まったかどうかも含めて詳細は不明です.数日の間に,二次病院への救急搬送が何件かあったのですが,高齢者の肺炎も含まれており,嚥下障害に起因するものではないかと危惧しました.歯科医師会は2つのチームが巡回診療をされていましたが,各避難所を週に1回ずつ回るのが精一杯といった感じで,時間も限られており,口腔ケアもなかなか徹底できてはいなかったと思います.避難所で支給される食事は,主食として,おにぎりや麺類,菓子パン類が多く,嚥下障害のある人が食べるには難しいものが多かったと思いますが,市販されている様な嚥下障害食が支援物として送られても,はたして嚥下障害者に届く流通システムが確立できるかどうかは分からないと思います.各避難所の情報もそれぞれの医療チームから届くものがすべてであり,その中には嚥下障害についての情報はみられず,積極的に嚥下障害者支援を謳って活動しないと情報収集は困難かもしれません.
医療法人 柳育会 八女リハビリ病院 総合診療科・リハビリテーション科
村田 和弘