日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

嚥下障害のリスクマネージメント1(2010/08)

 Most importantly, we must systematically design safety into processes ofcare. ~最も重要な点は診療・ケアのプロセス中に安全というシステムを組み込むことである~(WC Richardson. To Err is Human序文より)
 誤嚥及び嚥下障害について、そのリスク回避システムを日常診療に組込むことは非常に重要です。嚥下障害の治療・リハビリテーション・ケアもその例外ではなく、多くの職種が関わるなかで誤嚥、誤嚥性肺炎へのリスク管理システムを作成するのは容易ではありません。
 我々はHazard and Operability Study (HAZOP)法という管理工学的手法を、誤嚥・嚥下障害のリスク管理に応用して、新たなリスクマネージメントの方法を開発し、国内外に発信しました。HAZOP法は、プロセスの問題発見・解決をチームで行う手法であり、もともとは化学プラントの安全解析に使用されてきてもので、現在ではIECで国際規格化されています。HAZOPの目的は、①システムにおけるリスク(Hazard、危険源)を特定することと、②特定されたリスクの潜在的な影響を評価し対策を立てる、ことにあります。また、もともとHAZOPでは「誰が」行うかに重点が置かれているため、クリニカル・パスとの整合性が高い(作成が容易に行える)という利点もあります。

 

東京医科歯科大学 山脇正永