嚥下機能改善手術と地域連携(2023/09)
重症の嚥下障害に対し、嚥下リハビリテーション治療の効果が乏しい場合、あるいは嚥下リハビリテーション治療で経口摂取が可能となっても十分でない場合には嚥下機能改善手術の適応の可否を考慮することになります。その際に大切なことはそれぞれの患者様の嚥下動態を正確に把握することです。嚥下動態のどの部分が不足しているのか、それを手術で補うとどの程度嚥下動態が改善するのかを予測し、最終的なゴールをある程度提示した上で、そこに向かって患者様だけでなく家族、医療スタッフの皆様と協力しながら治療を進めていく必要があります。嚥下動態を評価するためには嚥下造影検査が適しています。嚥下惹起性、咽頭クリアランスがどの程度障害を受けているか、喉頭挙上距離や舌骨の運動は問題ないか、誤嚥や喉頭侵入の有無など様々な項目を評価することで、どの手術を行うべきかを検討します。
嚥下機能改善手術を行ったあとは、嚥下リハビリテーション治療が必要です。そのためには手術後に適切な時期にリハビリテーション治療を開始し、その後スムーズに回復期病院あるいは生活期でのリハビリテーション治療へ繋げていく必要があります。また、リハビリテーション科との連携も重要になります。私達の施設では嚥下機能評価、リハビリテーション治療を含め、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、言語聴覚士、摂食・嚥下障害認定看護師、管理栄養士など様々な職種の方々とチームを組んで取り組んでいます。地域連携を充実させ、回復期病院での嚥下リハビリテーション治療、あるいは自宅退院が可能な方には生活期でのリハビリテーション治療について各施設の先生方と綿密に連携をとり、治療を行える環境を整えることを心がけています。手術の効果を十分出すためには手術の適応や手術手技も大切ですが、こういった地域連携の重要さをいつも感じています。
京都府立医科大学
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室
杉山庸一郎