日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

咀嚼嚥下機能と食形態の関係(2023/03)

咀嚼機能が低下した場合には、硬いものが噛めなくなり、柔らかいものを摂取して対応する。嚥下機能が低下した場合には、水のようにさらさらしているものは咽頭での流速が早く、誤嚥しやすいため、とろみをつけて対応する。

つまり、咀嚼機能が低下した場合の対応と嚥下機能が低下した場合に対応する食形態は異なる。しかし、咀嚼機能と嚥下機能が同時に低下している場合も多い。

最近まで、病院独自の食形態やとろみの度合いで対応してきたが、2013年に日本摂食嚥下リハビリテーション学会が提案した嚥下調整食分類が作成された。2016年の診療報酬改定で、摂食嚥下低下した患者に対する栄養指導料が算定できるようになった。対象患者は、「医師が、硬さ、付着性、凝集性などに配慮した嚥下調整食(日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分離に基づく)に相当する食事を要すると判断した患者であること」と明記された。ここに記載されている硬さとは食品の硬さの程度であり、付着性とは食品がくっつきやすい性質を有しているかであり、凝集性とは食品のばらけやすいかばらけにくいかという指標である。また、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の分類に基づく嚥下調整食と明記されたことから、病院で提供する嚥下調整食の分類の統一化が進んだ。また、この分類では、とろみの程度も3段階に分け提案している。このように嚥下調整食の形態の統一化が進み病院間連携は行いやすくなってきた。一方では、嚥下調整食の臨床的有用性に関する知見は少ない。ここでの知見とは、適切な嚥下調整食を提供することで、誤嚥性肺炎はどの程度低下するのかなどの臨床的な効果を報告した論文である。今後は、臨床的効果についての知見が積みあがっていくことが期待される。

県立広島大学人間文化学部 健康科学科
栢下 淳