日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

パーキンソン症候群患者の内服時における観察・対応(2015/06)

パーキンソン症候群患者は薬剤で症状が改善するため,内服治療が非常に大切です.しかし,舌の動きが悪く,うまく内服することができない患者が多いため,患者がきちんと内服できているか,介護者は注意深く観察しなければなりません.「口腔ケアのときに飲んだはずの薬が歯と頬の間から出てきた」「飲んだと思っていたら薬が舌に残っていた」ということがあれば,普段から薬を飲めていない可能性があります.介護者は患者が内服した後に口腔を観察する習慣をつけましょう.

パーキンソン症候群の患者は便秘の治療のため酸化マグネシウム製剤を内服していることがあります. Lドパ製剤と酸化マグネシウムの両方が長く口腔に停滞すると,配合変化が起こり,舌は黒~茶色に着色します(写真1).また,酸化マグネシウムとLドパが混ざると,Lドパが酸化し,薬の効果が弱くなります¹⁾.嚥下障害を合併している患者に薬を飲ませる場合には,飲み合わせにも注意しましょう.
患者に内服させる時に介護者が注意するポイントとして,まず口腔の乾燥状態をみます.口腔が乾いていれば適度に湿潤させましょう.また,内服の時に頸部が後屈しすぎていないか観察します.頸部後屈位での内服はしばしば誤嚥の原因になります.そして,複数の薬を同時に飲んでいないか注意して観察します.同時に複数の錠剤を飲むのは,健常者でも困難なので,一つずつ内服できるようにセットします.
錠剤を液体と一緒に飲むことが難しい場合,飲み込みやすいものに包んで内服すると良いでしょう.その具体策として,内服時に嚥下補助ゼリーやとろみをつけた水分に錠剤を包む方法があります.また,オブラートに錠剤を入れてゼリー状になるように濡らすと口腔で薬剤がばらつかずに内服することができます.粉砕した錠剤を大量に内服すると口腔でばらついてしまうため,割錠程度が良いでしょう²⁾.

201506写真1
文献
1)福田光司.酸化Mg製剤がL-DOPA/DCI(配合剤)へ与える影響 ―ビタミンC剤による相互 作用抑制効果の期待― 日病薬誌.46.(12).1648-1652.2010.

国立精神・神経医療研究センター病院看護部 臼井晴美