日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

パーキンソン症候群に対する摂食嚥下リハビリテーション(2018/04)

パーキンソン病(PD)の摂食嚥下障害は頻度の高い合併症であり、食事姿勢異常や口腔から咽頭への送り込み不良、誤嚥など先行期から食道期のすべてが障害される。PDの嚥下障害は、L-dopaなどの抗PD薬で改善しないことが多く、嚥下機能の維持・改善には、摂食嚥下リハビリテーションの実施が必要である1).
PDに対する摂食嚥下リハビリテーションには、以下のような様々な報告がある2)。①Lee Silverman Voice Treatment(LSVT®)LOUD:口腔通過時間(OTT)や口腔咽頭嚥下効率(OPSE)を改善した.② Video Assisted Swallowing Therapy(VAST):嚥下造影検査(VF)の動画を見せながらのフィードバックと嚥下訓練により咽頭残留が有意に減少した。③ 呼気筋力練習(EMST):呼気加速が増加し,VF上の誤嚥が減少した。④ メトロノーム訓練:メトロノームと間接嚥下練習の組み合わせにより、口腔移送時間が有意に短縮した。⑤ 間接嚥下訓練:舌可動域、舌抵抗訓練、声帯内転運動、メンデルソン手技、頸部体幹可動域訓練により、premotor time(刺激から筋肉の活動が起こるまでの時間)が有意に延長した。⑥ 姿勢・食形態調整:蜂蜜状とろみを嚥下したときの誤嚥の割合が最も少なかった。ネクター状とろみと顎引き嚥下にも誤嚥の予防効果があった。一方で、頸部表面電気刺激(SES)やボツリヌス注射はPDの嚥下障害には効果がみられなかったと報告されている3)、4)。
他にも、梨状窩に残留を認める場合には頸部回旋嚥下、シャキア法や嚥下おでこ体操といった頸部挙上訓練などを実施することも有効な場合がある。患者の状態や嚥下機能に応じて、適切な訓練法を選択する必要がある。
参考・引用文献
1) 山本敏之,村田美穂.こうしよう!パーキンソン症候群の摂食嚥下障害 第1版 東京:アルタ出版;2014
2) Van Hooren MRA, Baigens LWJ. Voskuilen S. Treatment effects for dysphagia in Parkinson’s disease: A systematic review. Parkinsonism and Related Disorders 2014: 20, 800-807
3) Baijens LW, Speyer R, Passon VI. Surface electrical stimulation in dysphagic Parkinson patients: a randomized clinical traial. Laryngoscope 2013: 123(11), E38-44
4) Nobrega AC, Rodrigues B, Melo A. Does botulinum toxin injection in parotid glands interfere with the swallowing dynamics of Parkinson’s disease patients? Clin Neurol Neurosurg 2009: 111(5), 430-432
国立精神・神経医療研究センター病院  言語聴覚士 中山慧悟