パーキンソン病患者さんの摂食支援(2017/01)
パーキンソン病ではその半数に嚥下障害が起こされるとされています。パーキンソン病の患者さんは、手足や顔面、口腔の筋肉のこわばりや、体幹を支える姿勢保持が困難になるなど、運動のコントロールがしにくくなる症状があります。そのため、咀嚼しタイミングよく飲み込むことが難しくなり、食べにくい、誤嚥しやすいという事態が起こることがあります。今回は、次の4つの視点からそのような場合の対応策の例をご紹介します。
◆いつ食べるか
On-Off状態がある場合、抗パーキンソン病薬の内服やアポモルヒネ皮下注による薬効がある時に摂食するようにします。Off時には食物の取り込みが困難になるばかりでなく、困難を押した摂食では誤嚥を起こす危険性が高くなるからです。食事を楽しむことができないことは言うまでもありません。
◆どうやって食べるか
体幹が前へ曲がる、前へ倒れるという状況をよく見受けます。前へ曲がると腹部が圧迫されて十分な量を摂取できなくなったり、食後に逆流したりする問題が起こることがあります。また、食道の蠕動運動が弱いことが加わると飲んだお薬が食道内に留まり、薬効が出なくなることがあります。さらに、横へ曲がる場合も含めて、お膳をよく見て食物を取り込みにくくなり、自己摂食が難しくなってしまいます。この場合の対策としては、車いすや椅子のひじ掛けで支えられるようひじ掛けの高さを選んだり、間にクッションを置いて支えるようにします。それでも難しい場合は理学療法士が用いるポジショニング用の太い、ベルトを体幹の適切な位置に巻いて起こした姿勢を維持する方法もあります。また、テーブルの高さの方を身体に合わせるなど、できるだけお膳を見て取り込むことができる条件を調整します。いずれの場合も理学療法士、作業療法士の工夫が役立ちます。
◆何を食べるか
飲み物でむせる場合:咀嚼を必要とする食物と、飲み物では咽頭を通過する時間が違います。飲み物は、より速く移動するためゴクンと飲み込む嚥下反射が間に合わず誤嚥をするあるいはしかけることになり、それを吐き出すためにむせが起こります。むせずに飲み込む工夫として、ゆっくりのどに入るように、飲み物の動きを遅くするとよい場合があります。それがとろみ付けです。スープや汁物に少しのとろみを付けるだけでも楽になる場合があります。また、トマトジュースやネクターなど元々少しとろみのある飲み物を選ぶこともお勧めします。
咀嚼~嚥下が上手くいかない場合:全体的に柔らかい献立、トンカツよりもカツ煮、よく煮たおでんなどを選ぶとよいでしょう。また、こんにゃくやかまぼこ、プチトマトのように口の中で逃げるように動くものは食べにくいので、避けるかよく煮る、混在させないで一種類ずつ口に入れ、よく噛むことを意識して噛んで飲み込むなどの工夫でトラブルを減らすことができます。
埼玉県総合リハビリテーションセンター 言語聴覚士 清水充子