パーキンソン病の嚥下障害の自覚(2010/09)
パーキンソン病では誤嚥した時の咳嗽反射(咳をする反射)が起こりづらいことや咳嗽力(咳をする力)が弱くなることが多く,自覚症状がないまま嚥下障害を合併していることがあります.
当院で嚥下造影検査を行ったパーキンソン病患者と認知症を伴うパーキンソン病患者135人を調査したところ,嚥下造影検査中に誤嚥した28人のうち嚥下障害の自覚症状があったのは半数の14人でした.一方,検査では誤嚥していなかった107人のうち17人が自分に嚥下障害があると思いこんでいました.パーキンソン病や認知症を伴うパーキンソン病の患者さんは,嚥下障害の自覚がなくても安心できませんし,嚥下障害の合併を不安に思っていても嚥下障害を合併しているとは限りません.
食事や飲水,薬を飲むときにむせたり,いつも痰が絡んだような声であったりするのは,嚥下障害を疑うサインです.パーキンソン病の患者さんにそのような症状があることに気づいたら,まずは主治医に相談してください.早い時期に嚥下障害を発見し,抗パーキンソン病薬や食物形態の調整を行い,安全に経口摂取を続けましょう.
国立精神・神経医療研究センター病院 神経内科
山本敏之