誤嚥があれば口腔の異常も疑う(2013/04)
「誤嚥など咽頭の異常がある場合、口腔の異常も疑うべきである」
障害者の「摂食・嚥下機能障害」は、歯科が専門とする口腔ないし口腔と咽頭に異常がある人が多いと言われています。例えば、Feinberg(1991)の報告では、誤嚥を起こしている認知症、脳卒中、廃用性症候群、パーキンソン病、病名不明などの病気の患者50名に対して、VFを撮影し、どの部位に異常あったかを調べたところ、誤嚥を起こしていたのは咽頭のみの異常ではなく、口腔ないし口腔と咽頭の両方に異常のみられた患者が、圧倒的に多かったという結果が出ています。この中でも口腔にだけに問題がある患者でも誤嚥を起こしていました(表1)。
そこで、摂食・嚥下機能障害のある患者に係わる医療者は、きちんとした口腔・咽頭の構造と機能に関する知識が必要であり、患者に病状を正しく理解してもらえるように説明できなければならないと思っています。最近、「口が元気なら、若い!ぼけない!口腔からウエルエイジング」という本が出版(クインテッセンス)されました(図1)。この本は、筆者の阿部先生ならではの語り口と例え話しと図や写真を豊富に使いわかりやすく説明されていますので、多くの職種の方々にお勧めします。 例えば“上唇ってどこまで?”など聞かれてもちょっと答えられないこともイラスト入りで説明しています。実は、私が気に入っているのは「嚥下」の部分の説明が詳しく、イラスト入りでわかりやすくまとめられているところです。現在、NSTの回診のときに患者やその家族に病状を説明するツールとして使用しています(図2)。
ヒトが「噛む」「飲み込む」ことは健康長寿に繋がっています。「噛めない」「飲み込めない」でいる摂食・嚥下に問題のある人たちに対して機能回復、栄養管理に携わっている者として口腔・咽頭の成り立ちについて見直してみませんか
国立病院機構千葉東病院 大塚義顕
図1 口腔からウェルエイジング 図2 NSTの回診のようす
(著 阿部伸一)
表1 誤嚥性肺炎を伴う高齢患者における その原因となる障害と機能障害のパターンについて
Causes of Impairment and pattern of Dysfunction in Elderly | ||||
Patients Who Aspirate | ||||
Cause | Oral Abnormalities |
Pharyngeal Abnormalities |
Oral and Pharyngeal Abnormalities |
Total No. of Patints |
Dementia | 13 | 2 | 6 | 21 |
Storoke | 7 | 3 | 5 | 15 |
Deconditioning | 1 | 2 | 3 | 6 |
Parkinson disease | 2 | 1 | 2 | 5 |
None identified | 0 | 2 | 1 | 3 |
50 | ||||
(Feinberg,M.J.:Videofluoroscopy in Elderly Patients with Aspiration: Importance ofEvaluating Both Oral and Pharyngeal Stages of Deglutition.AJR,156:293-296,1991.) |