地域の嚥下連携(2013/05)
脳卒中・神経変性疾患に嚥下障害を合併した場合,一般病院では主治医、栄養サポートチーム、摂食・嚥下チームが嚥下障害の評価を行い,訓練や治療,栄養管理を行っているが、1つの病院で治療を完結することは困難である.嚥下機能の改善を図り,また維持するためには、大学や急性期病院のみならず,回復期リハビリテーション病院,療養型病院,地域の介護施設や在宅医療に携わる多職種連携が必要である.脳卒中では地域連携パスが普及しているが,嚥下に関する項目は少なく,言語聴覚士や認定看護師が別途記載しているのが現状である.逆に在宅患者や施設入所者に嚥下機能評価が必要となった場合の情報提供様式も様々である.嚥下の地域連携には正確な情報共有が必要であり,嚥下調整食の名称統一化や共通の摂食・嚥下連絡票を用いる活動が全国的に進んでいる.
「京滋摂食嚥下を考える会」は「いつまでも、食事を楽しめる京都、滋賀」をめざして活動する、多職種が集う有志の会である.京都府下、滋賀県内で地域勉強会、調理実習、講演会等の支援を通じ、地域連携の推進を目指している.京滋でも独自の嚥下調整食の名称統一化や摂食・嚥下連絡票を作成した.
しかし,嚥下に関する知識や技術,環境などが異なる多職種の共通理解を得る書式を作成するのには多くの議論を必要とした.専門的な情報が必要である一方,多職種全員が理解できる必要がある.そこで,一般領域と専門領域に分割し,記載項目を自施設で記載できる内容のみに限定することとした.
京都府医師会では2010年「食べることを考える小委員会」が発足し,京都府下で段階的嚥下調整食共通基準と摂食・嚥下の連絡票の導入を推進することが決定され,理解を促すために「摂食・嚥下の虎の巻」を作成した.2011年から脳卒中と大腿骨頚部骨折の京都府地域連携パスに,当会で作成した「摂食・嚥下連絡票」の導入が承認され、広域での普及が始まった.現在,導入後の問題点として,これまでの地域連携パスとの重複,嚥下連絡票の活用方法,嚥下連絡票記載にかかる労力などがある.今後,アンケート調査を行い.嚥下連絡票運用の実態調査を行い,検討した上で今後の地域連携に生かしてゆく方針である.
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京都第一赤十字病院 巨島文子