COVID-19後遺症としての嚥下障害:むせのない誤嚥に注意(2021/03)
COVID-19はいまだに医療・介護に大きく影響を及ぼしています。我々摂食嚥下障害に関わるものとしても、日常診療で感染するリスクに対して、日本嚥下医学会からも診療ガイドラインが提唱されています(https://www.ssdj.jp/)。
今回、COVID-19後遺症としての嚥下障害の嚥下造影所見の報告がされました。COVID-19の急性呼吸不全より回復した21例の患者さんのVF所見をまとめた報告です。それによりますと、19例で異常所見を認め、16例で誤嚥を認めました。共通した所見としては、口腔相の食塊移送障害、咽頭相の嚥下運動遅延、咽頭収縮力低下等です。最も特徴的な点としては誤嚥を認めた16例のうち15例が無症候性誤嚥(silent aspiration)でむせこみがなかったとのことでした。今回対象の患者さんは全例が人工呼吸器装着した例であり、挿管の後遺症としての摂食嚥下障害も加味すると想定されますが、咽頭感覚の低下については新型コロナウイルスの神経親和性(ウイルスが神経細胞内に侵入する)などの影響も考察されています。
COVID-19後遺症としては、呼吸困難、嗅覚障害、易疲労感などがクローズアップされており、今後も後遺症への対応が問題となることが予想されます。我々摂食嚥下障害に携るものにとっても、後遺症としての摂食嚥下障害及び誤嚥性肺炎には注意が必要です。
今回の論文からの教訓は、COVID-19既往者では、むせこみのない方でも咽頭感覚低下による無症候性誤嚥の可能性を常に考慮して、診療、リハビリテーション、介護にあたるべきということです。
参考文献
European Archives of Oto-Rhino-Laryngology, https://doi.org/10.1007/s00405-020-06522-6
東京医科歯科大学 臨床医学教育開発学 山脇正永