日本神経筋疾患摂食・嚥下・栄養研究会

唾液誤嚥(2012/03)

 唾液は潤滑作用、粘膜保護作用、創傷治癒促進、抗菌作用を持ち、一日に1~1.5L(安静時唾液量700ml~800ml)分泌される。しかし脳血管障害の後遺症による嚥下機能の低下が進んだり、変性疾患の病状が進むことにより嚥下機能が著しく低下し長期臥床ともなると唾液誤嚥が重要な問題になる。唾液や食物の誤嚥により引き起こされる誤嚥性肺炎は繰り返しやすく免疫機能の低下した患者の体力を奪っていく。

 

 誤嚥性肺炎予防のために口腔ケア、摂食時や食後および日常の体位の工夫、嚥下訓練が大切である。しかしそれでも繰り返す。喉頭気管分離術は極めて効果的であるが犠牲となる発声機能の重さに悩み手術時期を逸すると悔やんでも遅い。体位が悪いと口腔内に唾液のプールができている。こんな患者に時に試すものにメラ唾液持続吸引チューブがある。これは先端部が渦巻き状に加工された唾液を吸引する数個の小孔をもつ導管部と患者の口の形に曲がり口腔内に固定し易くする芯線部とでなり、チューブ先端を舌上部に置いて唾液を吸引する。吸引しすぎて口腔内を乾燥させると逆効果になるが選択肢の一つとして知っていてもよい。

 

 また気管カニューレ装着患者の嚥下内視鏡(VE)検査をすると内視鏡が水中を泳ぐように進むほど咽頭、喉頭内に唾液がたまっている。気管カニューレにカフがあっても垂れ込みによる気管内への唾液の流入があり頻回の気管吸引が必要となり、時に誤嚥性肺炎を引き起こす。このような患者に昨年より当院では低量自動持続吸引器「アモレSUI」を使用している。この吸引器はコーケンネオブレスダブルサクションカニューレと使用し、カニューレ先端から内部に貯留した分泌物を内部吸引チューブにより持続的に吸引する。吸引回数が激減することもあり、患者からは好評で、当院では5台稼働中である。

 

 以上はすべて対症的な処置であるが病状の進んだ患者の苦痛を改善する可能性がある処置なので知っていてもいいのではないだろうか。

 

鳥取医療センター 神経内科

金藤大三