摂食機能療法と摂食・嚥下チーム(2011/03)
平成23年の診療報酬では「摂食機能療法」は1回につき30分以上の訓練指導に対して180点の加算が認められる。実施できる職種は医師又は歯科医師、或いはその指示の下に実施する言語聴覚士、看護師、准看護師、歯科衛生士、理学療法士又は作業療法士である。対象患者は発達遅滞、顎切除及び舌切除の手術又は脳血管疾患等による後遺症により摂食機能に障害があるものとされ、多くの神経筋疾患患者が含まれる。
「摂食機能療法」の実施に当たっては、診療計画書を作成しなければならないが、これには、診断と機能評価、実施技術の選択、実施チームの編成、結果の評価などが含まれる。現在では多くの病院で栄養サポートチーム(NST)や摂食・嚥下チームといった多職種チームが編成されてこの任に当たっている。そうした場合でも多様な背景を有す患者、そして多数の患者を対象にして、より安全に、かつ効率よく食事と栄養が確保できるようにするには、初期の段階で、効率よく判定するスクリーニングシステムの確立と適切なやり方で経口摂取を可能にするシステムの開発が重要で、この二つのシステムがうまくかみ合う必要がある。
最近、当院の摂食・嚥下チームの一員である中山らは、摂食・嚥下障害のスクリーニングとしての入院時摂食機能チェックシートの活用に関する研究をまとめた。その大要は初期スクリーニングでチェックシートを使うことで摂食機能療法を行う群を4.2倍に増やしたことである。その流れは、入院時にチェックシートを利用して摂食嚥下障害をもつ可能性のある群を拾い出しさらに詳しい評価を行う。こうすることでより多くの患者を対象として、迅速に客観的に判断し、介入がなくとも食べられる群とさらに評価を行う群にわけ、その中から、摂食・嚥下障害の程度により看護師が評価し摂食機能療法を行う群と言語療法士により評価と摂食嚥下訓練を実施される群とに分けるのである。これは摂食・嚥下障害患者に対しある意味ではリスク管理にもなり、またQOLを高めるシステムでもあり、合併症や平均在院日数が減れば医療経済上メリットのあるシステムでもある。チェックシートのメリットは迅速に客観的に患者像が把握でき多職種が関わるチーム医療が円滑に動くことである。ただすべての疾患に適応できるシートはなく、今後の課題も残る。
このシステムの評価は誤嚥や誤嚥性肺炎などのリスクを回避する確かさとより多くの患者が経口摂取可能になることでなされる。多職種が関わるシステムの質を高めつつ維持していくのは容易ではないが安全に多くの人が食事できることを目指す限りリスク回避しつつ介入群を増やす努力は絶えず必要とされる。
摂食嚥下障害のスクリーニングとしての入院時摂食機能チェックシートの活用
中山雅子 鳥取臨床科学研究会誌 投稿中
鳥取医療センター 神経内科
金藤大三